チェチェン

   

バイト先の隣りがちっちゃいホテルで、そのホテルの前によく立ってるおばあさんがいるんだけど、マネージャーと店長がそのおばあさんのこと、隣りのホテルで働いてる、あまり親切じゃない人って話してたの。

でもわたしは何度か挨拶交わしたことあって、いつもニコってしてくれるし（これだけで親切だと思うようになったのもどうかと思うけど　笑）息子さんらしき人とお孫さんかな？って子と一緒にいるところ見かけたけど、すごく楽しそうで、”不親切な人”なんて言われる要素０に見えたけどな〜って思ってたらちょうどその日もおばあさん１人で外にいたからちょっと話しかけに行ってみた。

そしたらなんと彼女フランス語がほぼ全くって位喋れない。もちろん英語も。

不親切に見られてたのは言葉がわからないからだった。それにおばあさんはホテルで働いてるんじゃなかった。息子と孫と住んで…る？（”寝る”ジェスチャーをしてた。）

喋れなくても自国の言葉でわわわわーって話して来る人だらけのこの国で、喋れないからって喋らずにうなずいたり首を降ったり自信なさげに下を向いたり、こっちの言ってることがわからないから（しかたなく）そっぽを向いたり。日本人みたいな人だなぁと思いながら、どこから来たのかをジェスチャーでなんとか伝えると、彼女は「チェチェン」って答えた。

チェチェンなんて国のこと、なんにも知らないのに名前だけを知ってるのは、きっと戦争や紛争のニュースで耳にするからだってすぐピンときたけど、チェチェンはどこにあるの？いい国？って聞くと「ロシアの隣りの小さい国」って言った後、顔を隠した兵士達が銃を構えるジェスチャーをして悲しそうな顔をした。

わたしはジャポンだよ、ジャパン、知ってる？って聞いたけど、答えはあやふやだった。その後ヤパネがなんたら〜って言ってたけどロシア語かチェチェン語かでわからなかった。ヤパネはジャポネのことだったのかな？

その前の日に写真集の整理をしていて、戦場写真集を手にしてしまい、見るのをやめられなくてクラクラしながら結局４冊分の戦争写真を見たところだったから、酷いイメージが頭の中にわらわらと出てきちゃってチョチョチョと涙がでてきた。

おばあさんは何か言いたそうな顔で何も言わず、ニコっとしてわたしの首に触れた。

そのあと、わたしの首のハートのタトゥに気づいて、自分のハートのイヤリングを指差して見せた。

だからわたしは自分のハートのネックレスを見せた。おばあさんは片手でわたしの腕を掴んで片手で口元を隠してふふふふって笑った。

家に帰ってチェチェンのことをネットで沢山調べてみた。

島根県くらいの大きさしかないということ、チェチェン人は１００万人足らずしかいないこと、ロシアからの弾圧で人口の四分の一が殺されたこと、過激独立派はアルカイダと手を組みテロを繰り返していること…etc

おばあさんに聞いてみたいことが沢山ある。

毎日部屋から出てきては、人々を見て何を思っているの？

いつからフランスにいるの？

ロシアや自国の独立派のことをどう思ってる？

好きな色は？好きな言葉は？

そんなことを話せる日がくるといいな。

彼女の国の歴史は今、動いてる。

デェーディグドヨー：こんにちは

バルカウ：ありがとう

日本語の読みがな付きはこの２つしか見つけられなかった。

名前はジェスチャーで聞けるかな？

こういう出会いが大好き。